東京実況

1.

 

夜行バスには物心ついてから初めて乗ったから、海の中を小魚の群れに逆らって進んでるみたいな瞬間があるって知らなかった。寝落ちる直前まで聴いていた星野源のラジオのせいで変な夢を見て、起きたら横浜だった。

パジャマで夜行バスに乗るとパジャマで目的地に着くってことに東京きてから気付く。でも東京は多分余所者に寛大な街だから何にも思われて無かったと思う。東京駅近くのバスセンターのとこの植え込みで赤いチェックのパンツはいたホームレスが寝てたけど誰も見てなかったし。2キロくらい歩いてネカフェに行った。シャワー借りて風呂に入った。タオル代の250円を払うのがどうしても嫌で、着替え用に持ってきていたインナーで全身拭いてやった。

ネカフェは神田にあった。すすむくんと18時に新宿で約束をしていた。線路沿いにずーっと歩けば新宿に着くらしかった。ナビが仰る道はどこもかしこもアスファルトがほじくり返されて工事中だった。ニッカポッカはいたドカタのおっちゃんが忙しそうにしていた。

靖国神社にぶつかった。入口の「禁止事項」の看板の横で太った外国人のおじさんが嬉しそうに写真を撮ってもらっててカワイイって思った。

神社の中もクレーンとか重機でワイワイしてて、あーオリンピックが来るんだなって思った。ああ言ったけどほんとはやらないんじゃないかって心のどっかで勝手に思ってたからびっくりした。直す必要があるかわからないとこまでキレイにして、私が手コキ屋さんでショロショロ稼いだくらいではどうにもならない金額が猛スピードで動いてる。そのことがちょっと怖いなと思った。ルールなんて何も知らんから周りを見ながらテキトーに参拝して、別に何も狙い無いけど5円玉とか投げちゃって、そんで終わり。二拝二拍一拝だっけもう忘れた。

神社から出たら猛烈にお腹が空いてることに気づいた。ネカフェでジュースガブガブ飲んで誤魔化してだけどそれもここまでかって思った。何でもいいやって思って歩いてたけどお蕎麦屋さんの看板を見たらもうお蕎麦、ざる蕎麦しか考えられなくなってよっしゃ今日はお蕎麦だ!って思った。見たことない店だったけど食券制だったからチェーンだったのかな。ざる蕎麦、ほとんどフリーターみたいな身分のくせに30円払って大盛りにした。途中で黒いマスクをした黒い格好の金髪の女の人が店に入ってきて、私の大盛りざる蕎麦をチラッと見た。フリーターの分際で大盛りなんか頼みやがって、と思われたのかもしれない。いやそんなことはない、ここは余所者に寛大な街、天下の東京だもの。

おばさんが途中で赤い急須に入った何かを持ってきた。蕎麦湯だ。うわ、と思った。23年も生きてきてなんだけど、私はまだ蕎麦湯とどうやって向き合っていいかわからなかった。別に美味しくないし。「蕎麦湯 飲み方」って検索したらつゆを薄めろって出た。飲んでみた。うん、つゆを薄めた味だ。

 

音楽を聞かずに歩いていると頭の中に散文的な文章がバンバン浮かんで面白いので、ちょっと立ち止まって蕎麦屋でこうしてメモしてる。多分このペースでいけば13時ごろには新宿に着いちゃうだろうな。

 

2.

 

蕎麦屋を出るとウーバーイーツの会員を募集しているキャッチに引っかかった。基本押しに弱いのですべてのキャッチや勧誘の話を真面目に聞いてしまう。今会員登録をして友人を紹介してくれれば2万円から6万円が手に入るチャンスですよ!って言ってた。わーマルチみたいって思ったけどお兄さんの人のよさそうな顔を見ていたら何も言えなかった。気づいたらお兄さんだけじゃなくてお姉さんも集まってきてて囲い込まれたみたいで怖かった。お兄さんは私がウーバーイーツの対象地域外の限界集落在住だと知ると、あー、とか言って、またよろしくお願いします、とか言ってた。

聞いたこともない名前のわけわかんない駅ですら私の実家の最寄り駅よりはるかに豪華で大きくて東京、意味わかんないって思った。人も多くてごちゃごちゃしてるし。半袖半ズボンのおじさんが満面の笑みでキックボードに乗っていた。服を着た犬。生足が傷だらけの就活生。

東京って坂が多いんだなって、キャリーケースを引きずっているから余計そう思うのかもしれない。緩い坂の下に広がるグラウンドで、男女数名が草野球をしていた。ちょうど勝負がついたらしかった。6対7で、どっちが勝ったとかはわかんなかった。ありがとーございましたー、って爽やかで脳死した挨拶。今日は別に晴れてなくて雲も多かったけど、こういう人たちには空は青く見えるのかもしれない。坂を上りきったビルの上に、菅田将暉がコーラを飲んでいるでっかい広告があった。一瞬、写真とっとこっかなって思ったけど、田舎者と菅田将暉ファンが同時に露呈したら投石されると思ってやめた。

新宿まであと3キロだってさ。あえて人通りの少なそうな裏路地を選んで歩いた。看板を見ただけで、ちょっと気になるな、入ってみよっかな、みたいな店が乱立している。裏路地でこの調子なら、表の通りなんか歩いたらおもしろコンテンツにもみくちゃにされて死んでしまうかも。でも裏路地は途中で終わっちゃったから、私は表の通りに引っ張り出された。一生かかっても消費しきれないコンテンツの波。在ること自体は知っているのに、それがどんなものかは知らないってことが昔からすごく怖かったから、私は東京には向いてないんだって思う。げんに今だって、新宿御苑コメダのコンセント席にパソコンつないでこれ書いちゃってるし。岐阜にいるときとなんも変わんない。

おしゃれ。洗練。スマート。別に憧れてるわけじゃないけど、そういう地元でボケっとしてたら一生手に入らないものがここではあっという間に手に入るんだと思ってた。けど実際はキックボードに乗ったおじさんだし、服着た犬だし、傷だらけの就活生だ。そもそも都会を受け取る私が私のままじゃ、一生東京に歓迎されることはないんだと思った。東京に向いてるのは、ビル街のど真ん中で草野球しちゃうような、都会を都会だと思わない人たちなのかもしれない。

 

3.

 

すすむくんと別れて、私は1人で山手線の電車に乗った。ずいぶん前5chがまだ2chだったころ、満員電車ででかいリュック背負ってるやつ何?みたいな物申す系スレを見たことがあったから、私は大人しくリュックサックを抱っこした。

街は過ぎても過ぎてもガチャガチャしたまま。電車の中の、誰の目にも留まらない中吊り広告。車内灯はやけに白っぽく明るくて、1人ではしゃいでる人みたいでちょっとイタかった。すし詰めってくらい人間がいるのに誰とも目が合わなくて、人間は何のためにこんなにいっぱいいるんだろうって哲学的なことを思ったりした。心細くなって、抱きしめたリュックサックを赤ちゃんみたいにあやした。

西日暮里で乗り換えて北千住へ。すぐ来ていた我孫子行きはぎゅうぎゅう詰めで、何となく馴染めないような気がして見送っちゃった。みんな何も疑いも持たず来た電車に詰め込まれてく。何も考えずそうしているわけじゃなくて、そうしないといけない理由をそれぞれ持ってるってことがなんか気の毒だった。電車の中にピンクなのか紫なのか分からないけどとにかく派手な髪の毛の女の子がいた。お年のほどはわからない。高い位置のツインテール。凝視してたのは私だけで、その子は車内で心地よく無視されている。「三井生命は大樹生命へ。」車内広告。竹内涼真。現実にいたらあんなに有り難がられる彼も、ここでは誰にも歓迎されない。良くも悪くも無関心なんだみんな。余所者にも異端にも寛容で無関心な街東京。新宿の人の多さとかは好きになれないけど、そういう所はちょっと好きだと思った。

日付が変わってから駅に着くと、お姉ちゃんとお姉ちゃんの彼氏が車で迎えに来てくれていた。お姉ちゃんの家の最寄駅は周りに何もなくて、田んぼと平和堂以外何もないほぼ荒野の地元を思い出した。「なんもないやん」って言ったらお姉ちゃんは「あるやん」って言って目の前の暗闇を指差した。ついに頭がおかしくなったのかと思って爆笑したけど、明かりが付いてなくて見えなかっただけで大型の商業施設があるらしかった。「テナント2つしか入ってないけど」ってお姉ちゃんの彼氏が言った。いやそれなんもないやん。無やん。アクセスが悪いのと、周りに会社も学校もないせいで人を呼べないんだってさ。そういう、頑張ってるのに空回ってる田舎を見ると限りない人臭さを感じて愛おしくなっちゃうな。

 

4.

 

朝はお姉ちゃんの彼氏が最寄駅まで車で送ってくれた。車の中で私の下宿先は田舎だけど治安が良くないこととか、アパートが狭いから一軒家で寝泊まりすることが落ち着かないこととかを話した。駅に着いたら、秋葉原までは格安の切符があることを教えてくれたので自販機でそれを買った。切符を入れたらピンポーンって止められて、え、何で?って思った。突き返されたそれをよく見たら、朝は10時からしか使えないって書いてた。自販機で買っちゃったから払い戻しもできなくて朝からほんとに萎える。しかもそれ買ったせいで財布の中にお金が無い!いっつもギリギリまでおろさないからたまにこういうことが起こる。歩いて3分のセブンイレブンまで歩いて、ATMで2万おろした。そんでまたさっきの格安自販機まで戻る。お金を入れようとしたら1000円札からしか取引できないって言われた。財布の中には万札が2枚。もう、私、ほんまこういうとこやんね、もっと萎えた。朝からマイナス一億ポイント。いきなりステーキでタダ喰いしても怒られないくらいのボーナスステージが無いと取り返せないな。またセブンイレブンまで歩いて行ってお茶買って1000円札に崩した。

電車は席がいっぱいでもう座れなかったから、仕方なく入口のところで手摺を掴んでた。昨日は暗かったからわかんなかったけど、この辺りも相当田舎だと思う。カーナビ道しかうつらないんじゃないの?ってくらい田んぼしか無くて、信じられんほど遠くまで見渡せた。果樹園らしきところの中ほどにある小高い丘みたいな場所に、おじさんが三角座りしてボーッとしているのが見えた。

電車の中では、スーツ着たおじさんが「図解でよくわかる病原虫のきほん」という本を熱心に読んでた。秋葉原についたら、胡座をかいて文庫本を読んでるホームレスがいた。大型のライトを専門に扱ってるショップがあって、おじさんたちが真剣にそれを見てる。なにが面白いのか全然わかんないけど、みんなにとってそれが大事なものだってことはなんとなくわかってるつもり。

 

5.

 

大手町駅で曲がってまっすぐ歩いていくと、お堀にぶつかって、そこがいわゆる皇居と呼ばれている場所だった。中学校の修学旅行で来たことあるからすぐわかった。なんか芸能人とかセレブとかがこの周りをジョギングしたりするんでしょ、知らんけど。わーっと広い芝生に、松やらなんやらの木々が絶妙に配置されている。ずっと向こうの霞ヶ関駅の方まで、白い歩道がアホみたいに長く伸びている。あの辺りってさぁ、なんかこう、すごいよね。ただスーツを着ただけの太ったおじさんが、東大卒大手商社勤務の高学歴エリートに見えたりするし、芝生でお弁当を食べている子連れのママが、夫は起業家自身は人気インスタグラマーのやり手主婦に見えたりする。私はその中にうまく溶け込めているのかなって思った。

 この予定調和感がよろしくないのかも。全部が全部、きちんとしてて、無駄なものは一切ありません!みたいな、過剰な自信。秋葉原の駅近くではあんなにたくさん見たホームレスの人たちも、ここに来てからは一人も見ていない。手入れの行き届いた緑と、PM2.5で遠くに霞んで見える、直角と直線で構成されたビルたちが、そこにいる人たちにまで中身のない説得力を持たせてる。ここにはマクドやサイゼはおろか、スタバすら見当たらない。私の知ってるものはなーんにもなかった。

 なんとなく道の端の方を歩いていると、芝生の上に黒いものがあるのが見えた。よく見るとそれは、おじさんのものと思しき靴下だった。数回履いただけではないだろうという貫禄のある黒い靴下は、引き出しにしまわれるときと同じように、お行儀よくクルっとひとまとめにされている。柔らかい緑の上の黒点は、だれがどう見ても異分子そのものだ。それは丸善檸檬よろしく周りのざわめきを吸収してカーンと冴えかえっている。思いがけないところで仲いい友達に会っちゃった、みたいな気分。

 あそこのおじさんはただスーツを着て散歩するのが趣味なだけの無職かもしれないし、子連れのママは浮気がバレて夫と離婚調停中かもしれない。休みの日はボランティア活動をして過ごしています、みたいなあの男子大学生は子供のころに小動物を殺したことがあるかもしれない。つまりはみんなそんなもんなのかもしれない。思いがけない乱入者に化けの皮を剥がれた人たち。ああして一生懸命おすまししていても、ドラマや映画の登場人物みたいに潔白じゃなくて、普通にいろいろあるんだろうな。なんだ、それって私と一緒じゃん。まじでさ、人生って大変だよね、初見殺しのイベント多すぎやもん。

完全に気をよくした私は、周りのみんなを見習って、背筋伸ばしたりとかしちゃって、せいぜいカッコつけて大股で歩くことにした。

 

6.

 

新御徒町駅で降りて、上野まで歩く。今日のお昼は丸の内ちゃんと一緒に食べることになっていた。昨日いた霞が関よりかなり生活感あって、人間臭くて、へぇけっこうやるじゃんて上から目線の気持ちになった。御徒町そのものには用事はないんだけど、『アメ横』なるものがあるって聞いてちょっと見ておこうと思って。『アメ横』。聞いたことある。若者がいっぱいいるんでしょ多分。スーツ着て疲れた表情の人はもうおなか一杯だし、せっかくの東京なんだから若いエネルギーを摂取したい。しばらく歩くと『アメ横』の看板。狭い道路に面して店が所狭しと並んでて、平日の午前中なのに結構な人がいる。暇なん?は特大ブーメランになってそのまま私の急所に突き刺さった。おしゃれで陽気な若い人がいたら怖いなって思ってたけどそういう人はあんまり見当たらなくて、気の早い半そで半ズボンの外国人ばっかりだった。うーん、『アメ横』、ちょっと思ってたんと違うかも。

お店も、古着屋さんとかが一日で見きれないくらいいっぱいあるのかなとか、想像してたんだけど、実際はかばん屋さん!干物屋さん!昼からやってる飲み屋!免税の薬局!干物屋さん!魚屋さん!干物屋さん!スポーツ用品店!干物屋さん!おわり。何?

 確かに私、『アメ横』のこと看板しか知らない。あの『アメ横』って聞いたらみんなが思い浮かべられるようなやつ。勝手にわくわくして勝手にがっかりしてしまった。端から端まで見てやろうと思って、丸の内ちゃんとの約束の時間より二時間も早く来たのに、30分で早々に撤退。適当にドトールに逃げ込んでこれ書いてる。

後ろの席のおばちゃん集団が、トイレに立った人のことを「あの人今日化粧が濃いよね」「やっぱ田舎っていうか、郊外から来てる人は、御徒町くらいでも気合い入れちゃうもんなのかね」って笑ってた。やめろやめろ。刺さるから。流れ弾全部こっち来てるから。田舎者の私とか、今トイレに立ってるおばちゃんからすれば、東京にあるものって全部「あ、テレビで見たことある!」ものなんだよね。芸能人みたいなもん。私にとっては『アメ横』もまさにそんな感じで、どうしても「『アメ横』に見られる自分」を想像して、気合が入るっていうか緊張しちゃうんよ。わかってほしいとは言わないけど、せめてそっとしといてくれや。

 だけど正直、『アメ横』に対しては私は結構対等の立場というか、そこまでいかなくてもまあまあいい線までいってんじゃない、みたいな自信があった。霞が関とか新宿では田舎者がバレるかも!浮いてるかも!って気が気じゃなかったんだけど、あそこではそんな風に思わなかったし。おそるるに足らずって感じ?まあ私ももう東京3日目だし、そろそろ馴染んできたってことなのかな?

 と思ったんだけど、後で調べたら私が『アメ横』に抱いてたイメージはそっくりそのまま『アメ村』のそれってことがわかった。恥ずかし。しかも『アメ村』、大阪にあるやつだし。東京に馴染んだとか思ってたの多分全部幻影。調子に乗ってすみませんでした。

 

7.

 

12時から予定が入ってたのに新御徒町駅に着いた瞬間にどうでもよくなってサボっちゃった。駅からフラフラ歩いて、プロントでパスタ食べた。ランチセットだったから、いい感じのサラダと好きなお飲み物がつきますよって言われて、なんかいつもと違うものって思って牛乳頼んだら美味しくなくてちょっと後悔。通りに面した席で、サラリーマンと半袖の外国人が忙しそうに行き来してるのを見ながらパスタをダラダラ食べた。9割くらい飲み終わった牛乳の表面で小さい虫が死んでた。虫のくせに自殺なんて、バカだなって思った。

お腹いっぱいまで食べたら、次の予定もキャンセルする勇気がモリモリ湧いてきて、よし、ネカフェで爆睡したろって気持ちになった。名前を聞いたこともないようなマイナーなネカフェに飛び込んで、図々しくも学割使ってフラットシート。電気消して夕方まで寝た。

目が覚めた後、ジュース飲みたくて部屋を出たら、本当に誰も居なかった。完全個室のネカフェだったから、扉が閉まれば人の気配もない。寝てる間に地球が滅亡してたらどうしようと思ったけど、店を出たらいつも通りの世界だった。サラリーマン、喧騒、半袖の外国人。居酒屋の前の小さな水槽で、捌かれて死ぬのを待つばかりのフグが泳いでいる。秋葉原の中心街を通ったら5mに一人の間隔でメイドが客引きをしていた。

人波の合間を縫って、東京駅の高速バス乗り場に向かいながら考える。自殺した虫、水槽のフグ、働いてる人間。死ぬか殺されるかいずれ死ぬか。ここで生きてる全てのものが、結局同じゴールにたどり着くために、頑張って、或いは私みたいに全く頑張らないで、毎日ばらばらで日々をやり過ごしている。でも別にそれって東京に限った話じゃないよね。私の産まれた街でも住んでいる街でも、東京と全く同じように、すれ違うほとんどの人が今までもこの先も全くの他人で、外からは見えないオリジナルの地獄を大事に抱えながら、どう足掻いたって最後は勝手に死んでいく。何も変わらない、お揃いだよ、お揃いで私嬉しいよ。

東京、私が期待してたほど特別な街じゃなかった。ちょっと人が多くて、物価が高くて、電車が便利で。チャラいと思ってた新宿でもマンションのベランダには洗濯物がちゃんと干してある。賑やかで寂しい、人間が暮らすための街だ。強いて違うことをあげるとするなら、東京の明るい夜を大荷物で歩いてると、こんな風にわけもなくセンチメンタルな気持ちになるってことだろうか。

鍛冶橋駐車場から夜行バスに乗って、カーテンが閉まったらもう自分がどこにいるかなんてわからない。きた時と同じように、海みたいな夜の中を進んでいく。カーテンの隙間から潜り込んだ外の灯りがまぶたの上にいくつもぶつかって眠れなかった。通路挟んだ向かい側のお姉さんがありえない角度で爆睡している。うとうとしかけた時に、子守唄がわりにイヤホンから流したグッバイフジヤマが漏れてやしないかと心配になって2回くらい起きてしまった。時刻は1時30分。何を学んだでも、何を得たでも無いんだけどただ漠然と行ってよかったなって思った。東京。何でもあるけど欲しいものは何もなかったし、特別じゃないってわかったけど、それでも好きだから、また何回でも来てあげるよ。じゃあ。またね。

 

 

 

 

女子大前観光

 

20時過ぎの池田公園は地獄と繋がっている!

 

池田公園の、変なモニュメントの前。ベンチに座って「戦姫絶唱シンフォギア」のテーマソングを爆音で流しながら、私はもう数年来の付き合いになるフォロワーのちのぴと、ホストクラブのキャッチが来るのを待っていた。ホストなんて、自分ひとりじゃ絶対行かないし行こうとも思わなかったと思うけど、ちのぴが「私の普段見ている地獄を是非見てもらいたい」と言うので、観光客気分で見に行ってみようかな、っていう。

ちょっと離れた場所で若い男の人が電話していて、ちのぴが「多分遅刻したホストやと思う、女の子と同伴すると遅刻しても怒られないから、ああやって女の子呼び出してるんだよ」って教えてくれる。いやいや、それで呼ばれて来ちゃう女の子もどうなのよ。同伴料っていうの、かかっちゃうんでしょ?やっぱりホストで遊べる人は心はともかく金には余裕があるから、そういうの気にならなかったりするんだろうか。

そうこうしているうちにキャッチがやってきた。ちのぴが言うにはこの時間帯の池田公園にはホストのキャッチとキャッチ待ちの女とホストとホストに殴られている女しかいないらしいので、キャッチも特に迷いなく声をかけられるというわけだ。一番最初に声をかけてきたところに行こうって話してたから、とりあえずその人についていく。

ちのぴがいつも行っている店が近くにあるらしくて、そこの人に見つからないようにちょっと遠回りした。別の店に行ったのがバレると怒られるらしい?別の店にお金落とすくらいならこっちで貢げ!みたいな話なのか、仲良い女の子が別の男と遊ぶのが嫌だ、みたいなめんどくさい話なのか。私は確かにこれからホスト行くけど、とりあえず無課金ユーザーって感じで、ズブズブにハマる予定もないし、そういう明文化されてないルールみたいなのを当事者に寄り添って理解できる日は来ないだろうなと思う。

フロントで形だけみたいな年確をすませて、席に通される。黒い革張りのソファー、薄暗い店内、自分から進んでは聞かないだろうなっていう、BGM。あーホストに来たぞ!って感じ。タバコ吸いますか?って聞かれて、さっきここに来る前にコンビニで買ったタバコをドヤ顔で卓上に置いた。いいえ、普段全く吸いません。これはレジで店員に「オプションの5ミリ」って言いたいがために買ったやつです。ライターも借りたやつ。喉が弱くてシーシャ(水タバコ)をちょっと吸っただけで重度の喉頭炎を患った私にとって喫煙者への道のりは遠く険しかったのだ。

事前の打ち合わせで『2人とも、ホスト来るのは初めてで、しかもお昼の仕事してるっていう設定でいこうね!』っていうことにしてたけど、ちのぴは重課金ホス狂エリートだし、特にそんなことない私ですら今日で2回目だった。ちなみに初めて行ったときは仕事のできるホストに注がれるままに大酒を飲んで酔っ払ってトイレでゲロってそのまま寝落ちてタクシーでちのぴの家まで途中強制送還された上、翌日定休日だった店に携帯を置き忘れ非番だったホストを呼びつけて店を開けさせるという迷惑千万ムーブをブチかましてしまったので、正直あんまり思い出したくない。あとシステムがよくわからんままよくわからん人を指名してしまってよくわからんまま8000円とられた。解せん。そして許さん。

そういうわけで、今回はその反省を生かして、お酒は控えめにし、指名を強請られても不本意であれば断固抵抗しようと決めていた。そして前回酔い潰れたせいでかなわなかった2部への生き残りを果たすのだ。

最初に席についたのはなんかこう、ザ・ホスト!って見た目の子で、昼間外に居たらちょっと私はウヘェってなっちゃうかなって思ったけど、こういう場所で見ると映えてて最高だった。バシッとスーツ着てても、サラリーマンにも予備校の名物教師にもならないの才能だと思う。前回の初陣まではホストは全員スーツ着てるものだとばかり思ってたんだけど、そういう考えはもう古くて、最近は私服オッケーなんだってさ。顔が一緒でもスーツ脱いだ瞬間その辺の兄ちゃんになっちゃうから、スーツはやっぱり偉大な装備だと思うし、由緒正しいプロトタイプホストを見たかった私からすれば残念っちゃ残念だけど、威圧感がなくなる分親しみやすくていいのかもしれない。

ホストは15分交代くらいで入れ替わる。お互い手の内を晒し過ぎない薄い浅い温い会話を3回くらい楽しんだ。内容としては、多分だけどつまらない部類に入る……ような気がする。仕方ないけどね。初対面でぐいぐい踏み込んでくる方が異常だと思うし、相手がどんな子かわからないから何を言ってもよくて何がダメなのかわからんだろうし。時間もないし。そんな中でできる限り女の子を楽しませようとして、自分を売り込むためにみんな一生懸命だった。

話聞く限りではバイト感覚で適当にやってる子なんかいなくて、みんなホストとして売れたいって思ってて、名刺とかも凝ってキラキラしたやつにしてて、毎日美容室行って髪の毛セットしてきてる子とかいて、あーマジなんだすごいなぁって思う反面、何が君たちをそうさせるの?とも思う。

私はキャバクラとかちょっとかじっただけだけど、こういう人気商売で上に行くのにどれだけ努力と我慢が必要か、みたいなことを、朧げにわかっていた。そこでどれだけ頑張って、お店のナンバーワンとかになって成功したとしても、人並みに苦労して最悪なこととか最悪な人とかいろいろ乗り越えてきた一部の人間には、どうせ夜の仕事だろうって下に見られてしまうことも。人に誇れることだけが仕事の醍醐味じゃないってわかってるけど悔しくならんのかな。少なくとも私は当事者じゃないのに勝手に悔しい。

 大学通ってた時、同級生の女の子が地元の男友達が名古屋でホストやってるらしくてさって笑ってた。私も一緒になって笑ったけど、今なら絶対笑わないだろうなって思う。だってみんな頑張ってるんだよ。自分の時間使って好きでもない女とラインしたり通話したり時には枕営業みたいなこともやったり、酒飲んで肝臓ブッ壊したりしながら一生懸命やっている。売れて、ナンバーワンとかになって、それでどうなるの?ゴールはどこにあるの?って思うけど、ゴールがわからんのなんてどんな仕事でも一緒だし。なんで笑うんだよ。おかしいだろ。まあ好きで好きで仕方なかったって刺されちゃう人も中にはいるみたいだから、全員清い貴い努力家だっていう気もないんだけどさ。

 店を出るとき送りっていうのがあって、気に入ったホストを一人指名してお見送りをしてもらうことができる。カバンとか持ってもらっちゃって、場末だけどお姫様気分が味わえるのだ。とりあえず一番最初にきた由緒正しめの子を選んだ。あとから送りに選んでくれてありがとう!みたいな一生懸命な営業ラインが届いて、なんかもう微笑ましくなってしまった。

 

夜はまだまだ終わらない。ちのぴが懇意にしているホストが、今新天地を求めて体入まわり(体験入店でいろんなお店をまわるやつ)の最中らしく、その子がいるお店に顔を出すことになった。そのお店自体にはちのぴも私も行ったことがなくて、だから初回料金っていうので入れた。だいたいどこのお店も初めて行くところで指名も何もしないなら3000円くらいで入れるのだ。ぼったくられたら怖いけどちょっと興味ある、みたいな人はそういうところから攻めていくのはありだと思う。

 これはキャバクラと同じだけど、すでに指名しているホストのいる女の子には名刺を渡したり連絡先を交換したりみたいなことはできない。だから営業攻撃は仲良しのホストを指名しているちのぴの代わりに私が全部被弾していた。どこの店でもみんな一生懸命でかわいいなって思う。店に入ったのは大体22時ちょい前くらいだったと思うけど、このまま閉店までここにいよっかって話になって、『飲みなおし』か『指名』の二択をとらされる。飲みなおし、はまあ延長みたいなもんで、初回料金にちょっと上乗せがあって、だいたい一万円前後をみておけばいいんじゃないだろうか。指名は今まで席についたホストから誰か気に入った人を選ぶやつで、時間的にはこっちも延長になって、料金も同じくらいだった。システムは店によっていろいろあると思うから、うわダルイ!高い!と思ったら時間になったら帰ればいいよ。

指名、することにした。だけど選べん。顔とかは特にこだわりないし、入れ替わりが激しすぎてどの子がどんな話をしてたかとか忘れてしまったし。もらった名刺を適当にシャッフルして、上から8枚目にあった名刺の子を適当に指名した。あとはほんと、アホの大学生の飲み会と変わらない感じ。ひたすら飲まされるゲームをやってIQを下げていく。IQ下がりすぎて気づいたら鏡月をショットグラスで何回も一気飲みしていた。吐かなかったの奇跡だと思う。指名した子は人気ある子なのかわからんけど別のテーブルでも指名が入っていて、そのせいでしょっちゅう消えた。いいけどさ別に。

ラスソン、ていうのはその日一番売り上げがあったホストが一番お金使ってくれた女の子のいるテーブルでカラオケ歌うことで、前回来た時も聞く機会はあったけどトイレで寝てたからほとんどわかんなかったやつ。選曲はジャンヌダルク、令和に入って初めてその曲聞いたけど、ホストの中では定番のアレらしい。ちのぴと仲良しのホストが、体験入店でラスソン歌えたらかっこいいと思わん?ってちのぴに言ってておー怖、と思うと同時に、ホストのホストらしい一面を見れてこれは撮れ高だなって思った。

 営業時間が終わって、さっきみたいにカバンを持ってもらって店の外に出ると、ちのぴの知り合いの女の子がホストにタイキックをしているところだった。後から聞いたら裁判所から赤紙が複数届いている強者らしくて、女子大前の治安を改めて思い知った。

 

 

 夜も深くなってきたけど、私はここで帰るわけにはいかない。また店を移動する。次は2部だ。ホストクラブには時間によって営業の形態を変えている店がある。さっきまでみたいな、オープンからだいたい0時~1時くらいまでの時間帯で、ド素人がホストって聞いて想像するようなスタイルのやつを『1部』、これから行くみたいな、指名とかもなく比較的ユルいバーみたいなスタイルのやつを、『2部』と呼ぶらしい。ちなみに『朝ホスト』なんてのもあって、これは朝の5時とかからあいているらしい。健康そのものかよ。みんなでラジオ体操でもすんの?あ、しないの。有識者(ちのぴ)から言わせると「朝ホスは指名取れない子とかがかり出されてるからみんな病んでるしもう行かん」そうです。

前回は1部の途中で頭と体がバグってしまったので、2部に行くのは正真正銘初めてだ。ちのぴはカラオケとかできるから2部の方が楽しいし好きだっていう。いいね。シンフォギア歌おう。

2部に選んだお店は今まで行った二つよりもかなり規模の小さいところで、ちゃんと行ったことなくてピンとこないけど、それこそバーみたいな感じだった。水色っぽくて明るい店内、ホストクラブとして営業しているところをあまり想像できない。しかももともと定休日の予定だったところを無理やりあけたからホストも一人しかいなくて、席料についてくる飲み放題も、デカいピッチャーに入った割り材と瓶の焼酎を渡されてご自由にどうぞ、って感じ。

確かに居心地がいいなと思う。生まれた場所も好きな歌も着たい服も生きる意味も違う人たちがなんとなーく、お互いを程よく無視しながら、それでもベン図くらいの結びつきで浮遊している。

カウンターには連れ立ってきていると思われる女の子が3人いて、カラオケを楽しんでいた。1人は手首の目立つところに薔薇のタトゥー。昼間のお仕事の収入だけじゃ若い女の子がホストで遊ぶのは厳しいと思うから、お客さんは風俗とかで働いてるような子が多かった。それか何を収入源にしてるかわからんご婦人。いずれにせよ、こういうとこでも来ない限り関わることのなかったタイプの人たちだなって思う。

ちのぴが、曲の『歌舞伎町』の部分を全部『女子大』に変えて歌うのを、笑いながら聞いていて、ちのぴのことをかわいいなって思う。出会ったとき私は大学一年ちのぴは多分中学生か高校生くらいで、その時は二人とも人生とか将来とかなんも考えてなくて、良くも悪くも純粋だった。それから何年か間があいて、再会した時にはちのぴはホストに狂っていたし、私は留年して実家と絶縁していた。お互いそれなりにメチャクチャなことになっていて、酒を飲みながらどうしてこうなっちゃったんだろうね、みたいなことを言いあったりした。メチャクチャだから、酔って歌って叫んで、幸せになりたいとかって、抱き合ってキスまでした。

私たちはこの先一生、胸を張って、自分はまともです、とは言えないんじゃないかと思う。遺書の書き出しはどう頑張っても『恥の多い人生を送ってきました』にしかならない。置かれている環境はもちろん、個人の気質みたいなもののせいで、私たちは、まともにはなれず、陰りのない人生でしたとは、とても言えない。私たちだけでなく、夜の空気を吸って生きている人はみんなそうなんじゃないかと勝手に思う。普通でいたいこととか、幸せになりたいこととか、とりあえず今すぐにはどうにもならないようなこと、気にしていないような顔をする。全部諦めた顔をして、ワルイ女のふりをすることは理屈じゃなく気持ちよかった。普段吸わないタバコとか吸ってみた。ホストとか行っちゃって、そんなことにお金使っちゃって、自分はなんてダメなんだ!みたいなかわいいかわいい自分に対する精一杯の哀れみがある意味幸せ。ホストとかに通う人は純粋な楽しさを求めるほかに、そういう、ダメ寄りになることでしか救えない憂鬱を倒しに来てるのかもしれない。読めない名前ばっか書かれた、ギラッギラの名刺を並べて作ったデッキでしか倒せない憂鬱を。

気付いたら、朝で、駅だった。ちのぴにタクシー代を出してもらったことをぼんやり思い出し、申し訳なくなる。私は待合室の椅子にもたれかかって2時間くらい寝ていたらしくて、心配した駅員さんに声をかけられた。その時はまだ泥酔していたので大丈夫、こういうの趣味なんで。とかわけわからないことを大声で言って駅員さんを困惑させた。通勤ラッシュで、私が普段眩しいと思っている会社員とかが、掃いて捨てるほどいて、高校生もいっぱい居て、こんな大人になっちゃだめだよ、清潔なままでいてね、と勝手に思った。朝に似合う自己憐憫、ほんとはそこまで自分終わってないって知ってるんだけどね。

多分もうホストに行くことはないんじゃないかと思うけど、いっちばん最初に連絡先を交換した正統派ホストから、毎日のように営業ラインが届いていて、こんなに頑張っているんだから応援してあげたいな……みたいな気持ちが確実に芽生えていて、やばい。ホストの効能は、顔の綺麗な男の子と喋れて楽しいこと、特殊な憂鬱と戦えること、あとは自分が誰かを支えている!という錯覚に陥れることだ。

 だから、ソシャゲに課金するのに抵抗のないオタクと、地下アイドルとかに育てる喜びを見出しているオタクは絶対行っちゃダメ。ハマるから。ホストそのものが地獄だとは思わないけど、沼落ちした後の人生については、ちょっと保証できないかな。これは遺言です。遺書の書き出しにして、後世に長く伝えていきたいと思います。

 

 

 

 

2月3日

 

 

犬と散歩に行く。いつもと違うルートを通ったら、土建屋と思しきお姉さんが犬の足の短さや顔のかわいさを褒めてくださった。

犬は大層満足げである。

 

昨日作っておいた1.5kgのティラミスを食べた。なんでも大きいにこしたことはない。


午後から姉の親知らずの摘出のために大きい病院へ行く。しかし、姉は顎を破壊する処置がどうにも恐ろしかったらしく、麻酔だけ打ってしょんぼりと戻ってきた。こうして姉は口内の感覚を無くしに行っただけの人になり、私はわざわざ大学病院までチャイラテを飲みに行った人になった。

抜歯は後日、全身麻酔にて行われる予定。

 

 

1月30日

 

 

正確無比な体内時計のおかげで、目覚まし時計に頼ることなく、毎日きっかり7時38分に目覚めている。ずっと朝がべらぼうに強いことだけが特技だ。ここ数年ほぼ負けなしである。

 


午前中、前の職場からもろもろの書類が届く。健康保険が失効したそうだ。改めて無職を実感する。

 


人間というのはストレスがありすぎても、またなさすぎても病気になるらしい。今の暮らしのストレスといえば、散歩の際にイヌがやたらめったら走り回るせいでリードでグルグル巻きにされてしまうことくらいだ。記憶があるといえば全くの嘘になるのだが、母親の胎内というのはこういう環境だったのかもしれない。感情の起伏が死にかけの心電図みたいに穏やかに凪いでいる。近いうち病気になるかもしれない。

 


今日、こちらに来て初めて自分の意思で外出をした。犬の散歩以外では家に篭っていたのだ。足がなかったというのもあるが、めんどくさかったというのもある。


ちゃんとした牛乳(低脂肪じゃないやつのことだ)が飲みたかった。何故か竹林の前にぽつんと建っている、仰々しいラブホテルの横を行き過ぎ、自転車でスーパーへ。一人で行動すること自体が久しぶりで、誰かに咎められるのではと何の根拠もなくドキドキした。ちゃんとした牛乳、ちゃんとしてない牛乳、その他余計なものを種々買って帰路に着く。

 

しょぼいが一応料理をする。最初こそ丁寧に材料をはかって作ろうと意気込み、「白ごはん.com」など眺めるのだが、途中で面倒になってやめてしまう。メイン食材の重さがまず違うので、それに合わせて調味料の量も全部変えなければならないわけだが、それを途方もなく億劫なことと感じるのだ。

 

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本日

ごはん

とんじる

長芋の煮たやつ

肉団子の甘酢あんかけ

 

 

 

 

1月29日

 

 


犬を洗った。本当は真っ白い犬だったのだと分かった。ちょっと黄ばんでいたのだ。

洗ったら、いい匂いになった。マクドナルドの紙袋の匂いだ。

触ろうとすると暴れ、激しく鼻汁を飛ばすので普段はあまり触らないようにしているが今日は何回か抱っこした。

 

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遠影


猫にちゅーるをやる。ちゅーるをやると爪が出てくる。野生の本能だろうか。

床にこぼれたちゅーるを舐めとって尚、その幻影に縋って床を舐め回す姿を見て少し恐ろしくなる。

 


今日は何だか大丈夫な気がして、全く計量せずに豚汁を作った。ダメだった。大きいフライパンから溢れた豚汁は瞬く間に家を覆い、そのまま茨城県をも飲み込んだ。茨城県は豚汁のアトランティスになったのだ。

 

 

 

 

1月25日(無職8日目)

 

無職になって1週間が過ぎた。何事も継続は力なりである。感慨深い。

 

諸事情で「転生したらスライムだった件」を8話まで視聴。なろう系というジャンルには初めて触れたがこういうものかと思う。


作業をし、作業の間に猫を触り、嫌がられる。


朝と昼だけ食事を軽くするインチキファスティングに取り組んでいる。乞うご期待。

 

明日やること

犬を洗う ペットボトルを捨てる

 

1月23日(無職)

 


 自分はショートスリーパーであると公言して憚らなかったのだが、最近もしかしたら違うかもしれないと思っている。茨城にきてから1週間近く、なんと毎日7時間以上寝ているのだ。以前は4〜6時間以上連続して眠ることが出来なかったため、そうに違いないと思っていたのだが、たんなる年単位の不眠症だったのだろうか。

 


 起きて犬の散歩へ行く。風が強かったので犬が飛んでいってしまった。(まだ帰ってきていない)

 


 帰宅後、作業。それなりに捗る。昼には昨晩過剰に作って大量に余らせた粥を食べる。

 


 午後から少し作業のち、気がかりだった洗面台の掃除を執り行う。どのくらいの汚さまで我慢できるかが同程度であるということは、一緒に暮らす相手を選ぶ上で結構重要なファクターになるのではと思った。

 


 夕食に向けて餃子の準備をする。普段は冷蔵庫の中で迷子になった野菜どもを、ひき肉と練り上げて皮に隠しているのだが、今回は分量を計って正確に作った。

 

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 学校で習った算数を、生活の中で役立てるというのが本当に苦手で、倍量を作ったりするときにこの式が欠かせない体になっている。

 


 付け合わせでスープを作ったのだが安心する味になった。内緒で卵を二つも入れたのだ。

 


 姉とばび(姉の彼氏の名前)を待つ間、本を読んで過ごす。近代においては外に向かう言葉(伝えるための言葉・コミュニケーション)ばかりが偏重され、内なる言葉(思考を形作る言葉)がおざなりにされている。内なる言葉を育てなければ、いくら外に向かう言葉が達者になったところで、その効能は一時的なものに過ぎない。とのこと。「言葉は思考の上澄み」という言葉が印象に残った。

 

 

 


飛んでいった犬が帰ってきた。